名倉潤いわく「彼女のすっぴんはアボカドみたい」
先日本コラムに、すっぴんでスタジオに来たモデルを撮影して使用前と使用後の激変にビックリさせられた体験を書いた。すると友人の週刊誌記者がフェイスブックで「僕も同じ経験をした」と書き込んでくれた。
取材現場に早めに着いて目にした地味な女性をADと思ったら実は取材対象者のグラビアモデルだったとか、ビジュアル系ミュージシャンがメイクを落とすと搬入の日雇いバイトみたいな顔になったという体験話だ。誰もが一度は同じような不思議に遭遇しているらしい。
かつて芸能人で「すっぴんがヒドい」との噂が出たのが、お笑いコンビ「オセロ」の中島知子(51)だった。
2003年にネプチューンの名倉潤が「中島のすっぴんはアボカドみたい」と語ったことがある。名倉と中島が恋愛関係にあるのではないかという噂が流れていたことから、「すっぴんを知っているということはやはり深い関係か……」との推測も流れた。いずれにしろ、中島のすっぴんは美醜でいえば「醜」ということなのだろう。
ちょうどそのころ筆者は仲良しの芸能マネージャーと食事し、「中島知子のすっぴん、見たことある?」と聞いた。彼は「何度か見ました。彼女は化粧映えするタイプなんです」とニヤニヤして、こう話してくれた。
「彼女(中島)は収録現場にすっぴんで来ることが多く、初めて見た人の多くは中島知子であることに気づきません。顔はソバカスと染みが多いため全体的に黒っぽく見え、目はメイク後に比べてずっと細い感じ。彼女が素顔で楽屋を歩いてると、スタッフが『すっぴんで歩くな』『早くメイクしてこいよ』と注意するほどですよ」
ところがメイクを終えると、目鼻立ちがくっきりした南国風の美人に変身するそうだ。
マネージャーに「誰が言いふらしてるんですか?」と怒られたが……
先日書いたように、筆者は肌がきれいでない女性ほど、メイクで美人に生まれ変わる怪奇現象を目の当りにしてきたので、なるほどなぁと思った。
その話が面白いので、筆者は中島の所属事務所に「中島さんの顔はすっぴんのときとメイク後に著しい変化があるそうですね」と問い合わせの電話を入れた。すると1時間ほどして担当マネージャーが電話をくれて、
「ええ~? 弊社の中島がブスですって。一体誰がそんな根も葉もない噂話を言いふらしてるんですかぁ?」
と気色ばんだ声で応じた。
「芸能マネージャーやテレビスタッフの間でも有名な話らしいですよ」
「どこのマネージャーが言ってるんですか。名前を教えてください。そのテレビスタッフは誰ですか?」
相手は一歩も譲らず、真っ向から否定して犯人捜しに話を向ける。記者にとって「どこの誰?」という質問はきつい。こちらは目撃したマネージャーの名前を明かせないため、それ以上の攻め手がないのだ。
言葉に詰まっていると先方は、
「そんなのウソに決まってるでしょ~。記者さんともあろう方がウソを簡単に信じていいんですかぁ?」
と反撃を強める。まるで高市早苗の「捏造よ」攻撃みたいだ。
というわけで筆者は中島のすっぴんネタを記事にすることを見送った。
ところがである。それから4年後の07年のこと。中島本人が自分が化粧美人であることを告白して話題になった。テレビ番組に出演したおりに、顔がロナウジーニョに似ていることや、スッピンのときにスタッフが気づかなかったエピソードをあっけらかんと語ったのだ。
受け狙いなのか、それとも周囲にあれこれ指摘されたため開き直ったのか。いずれにせよ、中島すっぴん騒動は本人のカミングアウトで決着がついたのだ。
「弊社の小泉今日子は土色です」と宣伝マン
芸能人のすっぴん伝説はほかにもたくさんある。その一人が小泉今日子(57)だ。1990年ごろ、あるレコード会社の宣伝マン2人と食事してたまたま芸能人のすっぴんの話題になったとき、こう言われた。
「弊社所属のキョンキョンもかなりの差がありますよ。すっぴんだと肌が土色で不健康そうなんです」
こう言って2人は顔を見合わせて笑った。どうやらレコード会社の社内でも暗黙の事実として通っているようだ。筆者は小泉のすっぴんがきれいでないという話は別のルートからも聞いていたのでそれほど驚かなった。
その2年後か3年後、すっぴんの小泉今日子と遭遇したことがある。六本木の青山ブックセンターで芸能マネージャーのK君と待ち合わせし、先に店に入って本を見ているとき、少し離れたところに身長150㌢前後の小柄な女性がいた。
顔を見た。向こうもこちらを見た。一瞬、お互いの目が合った。美人なのか不美人なのか判然としない造作だ。丸い顔に両目がやたらと大きい。
なんだかイラストのカワイコ子ちゃん風。というか目鼻のバランスが悪いのだ。おまけに、すっぴんのせいか肌がくすんで見える。そのときの印象は「変な顔をした妖怪猫目女」という感じだった。
本屋で見かけた本物の小泉今日子も……
まもなくしてK君がやってきた。彼は筆者を見るなり小声で、
「あそこに立ってる女の子、あれ、小泉だよ」
と教えてくれた。
「えっ、小泉今日子?」
「そうそう。キョンキョンだよ」
K君はこともなげに言う。
筆者も小泉は会見や撮影現場で何度か見た。1986年には聖徳記念絵画館の前で行われた映画「ボクの女に手を出すな」の撮影に取材でお邪魔して近くでまじまじと観察。「やっぱカワイイ」と感心したものだ。そのときの小泉と今の小泉は別人に見えるのだ。
ただ、K君は有名芸能プロのベテランマネージャーだから、小泉を間近で何度も見ている。間違えるはずがない。筆者も女の子を凝視した。そう言えば小泉今日子だ。メイクをしたら、テレビで見るいつもの顔になるのだろう。
このとき小泉は26、27歳。レコード会社のスタッフが言うように確かに顔が土色に近かった。
「ほら、彼女のすぐそばにいる客の男が気づいた」
K君が筆者の脇腹をつついた。
なるほど、小泉から3㍍ほどのところで立ち読みしていた若い男が彼女をジーッと見ている。
「あの若い男、まさか握手を求めるんじゃないだろうな」
K君は小泉と若者を睨んでいる。
マネージャーは仕事がら、タレントを守るという使命感を持っている。だから他社のタレントであっても、ファンに妙なことをされそうになったら助けなければならないと本能的に身構えるのだ。幸い、5分もしないうちに小泉は店を出て行ったため、K君の出番はなかった。
ちなみにK君は「俺は一度会った人の顔は忘れない」と豪語するほど顔面の識別能力に長けている。筆者とキャバクラに行くと、
「あそこの角の席に座っている女の子。あれ、3年前にキミと一緒に飲みに行った店でヘルプで席に着いた子だよ」
と見抜く。その女の子に席に来てもらって確認すると、本当に3年前、K君の言う店に在籍していたという。すごい記憶力だ。
それはともかく芸能人のすっぴんとメイク後の格差には驚嘆させられる。と、ここまで書いて、その昔ある女性タレントをすっぴんで取材して、顔が怖くて直視できなかったことを思い出した。次回はその話を書こう。