「裏金をありがとう」、そして「頑張れ、東京地検!」
一連の五輪逮捕劇を見て思いついた言葉が「裏金をありがとう」だ。日本ではこの20~30年で「感動をありがとう」なんてスローガンが発生。長野五輪あたりから、国民1億2000万人が感涙してビッグイベントに酔いしれるというシステムが構築された。この感動プロジェクトに疑問を抱く者は非国民とされるようだ。ちなみに「ニッポン、チャチャチャ!」というのは1980年代に生まれたと記憶している。
高橋治之とその舎弟分が逮捕され、AOKIの会長ら3人とKADOKAWA関係者の3人も逮捕された。現時点で逮捕者は8人。まさに「裏金をありがとう」の真相が暴露されつつある。
先日、ユーチューブを見ていたら、元朝日新聞記者の佐藤章が「検察は50人のリストを作っている」「今後50人が捕まりそうだ」などと言っていた。他のユーチューブ番組ではある大学教授が「捕まる可能性のある森喜朗さん」などと表現している。もし森喜朗が捕まったら、ロッキード事件の田中角栄逮捕以来の快挙といえよう。東京地検特捜部はどこまでやるのか。というか、とことんやって欲しい。
今月5日に角川歴彦が「僕はそんなに心が卑しくね、今まで50年も経営したことないんですよ。一緒にしないで」と言い放ったとき、筆者はこれは危ういと思った。こんなに「俺はシロだ」言い張ったら、検察を刺激するだけだと。案の定、彼はその翌日逮捕された。まあ、「卑しくね」発言がなくてもいずれ捕まったはずだが、強がり発言で“死期”を早めてしまった。
これまで戦後の日本史で疑惑の汚職事件は数々起きている。ロッキード事件やリクルート事件、カルロス・ゴーン事件など数え上げたらきりがない。その中で、今回の五輪疑獄は断トツに面白い。なぜなら国民が抱えていた疑惑が晴れてきたからだ。70年代のロッキード事件はいきなり米国から降ってきた疑惑。その後のリクルート事件とカルロス・ゴーン事件もどちからかというと突発した印象が強い。
ところが五輪疑獄は少し性格が違う。国民は長年に渡って「五輪の裏側にはワケの分からないカネが動いているのだろうなぁ」という印象を抱いてきた。なにしろ裏側で暗躍しているのが電通だ。竹田恒和元会長はフランス当局の事情聴取を受けた。マスコミは招致活動においてアフリカ票の取りまとめのために2億3000万円が動いたと報じた。そのためのエージェント「ブラックタイディングス(BT)社」をメディアがシンガポールに訪ねると、そこは惨めな雑居ビルで事務所の痕跡もない。セネガルのパパマッサタ・ディアク親子にこのカネが渡り、買収に使われた可能性があるとの観測も出た。
日本人はみな、多年にわたってモヤモヤしていた。真相を知りたがっていたのだ。だが有識者がトーク番組などで五輪開催に反対意見を述べると、御用学者の竹中平蔵に「何を言うんですか。五輪は何兆円もの経済効果をもたらしてくれるビッグイベントですよ」などと鼻で笑われた。
そんな折に、もともと評判の悪かった高橋治之は捕まるわ、森喜朗は事情聴取されて200万円もらったことが明るみになるわ、竹田恒和が社外取締役を務めるパーク24は家宅捜索を受けるわで、一気に疑惑の霧が晴れてきた。筆者のような反自民、反安倍晋三の国民はそれこそ、黒い霧が晴れて目の前がスッと明るくなった気分。だから「頑張れ、東京地検!」と言いたくなるのだ。
※森喜朗の写真は首相官邸HPより