ヤクザに「脱税法」を伝授され、Aさんは1000万円を送金した
  • しっかり800万円を返金してきた大阪の謎の会社

先ほど、バブル期の後半から10年間に渡って、16億円を稼いだAさんの話をリポートした。実はこの話には続編がある。節税の裏話だ。
大金を手にしたAさんは悩んでいた。制作上の必要経費が少ないため、ごっそり税金に持っていかれるからだ。
そんな折、ある人物と知り合った。高級ホテルの高層階のバーで夜景を見ながら酒を飲んでいるとき、近くにいたヒマそうな男と世間話を始めた。相手の男は長身で当時はまだ珍しかった大型の携帯電話を持っていた。顔は細面で目つきが鋭い。Aさんは一目でヤクザ系の人物だろうと見抜いたが、いつしか、
「何か良い節税法はないですかねえ」
と相談していた。
男はこう言った。
「だったら、俺の知っている会社にまとまったカネを振り込んだらどうだ。8割をあんたに返金させるよ」
男が言うには大阪に知り合いの会社がある。その会社の銀行口座に振り込めというのだ。その会社はある政党系列で、税務署の査察が入ったとしても「令状を出せ」などと抵抗するため、最近では税務署も面倒くさがって調べに来ないという。
Aさんは少し迷った。目の前の男とは知り合ったばかり。果たして信用していいものか。だけど多額の税金を取られるのはイヤだ。そこで数日後、男が教えてくれた会社に1000万円を振り込んだ。Aさんはこう説明する。
「1000万円は大金ですが、受注した仕事から考えると、あぶく銭みたいなものです。もし騙し取られても、まあいいかという気分でした」
ところがAさんがその会社に1000万円振り込んだところ、翌日、先方からAさんの口座に800万円が振り込まれた。これでAさんは帳簿上1000万円を払ったように装いつつ、こっそり800万円をポケットに入れたことになる。1000万円はその会社に仕事を発注した製作費として税務申告した。
「おそらく差額の200万円のうち、その大阪の会社が100万円抜き、例の男が紹介料として100万円受け取ったのでしょう。僕としては節税に大助かり。その後は省庁PR誌の仕事がなくなるまで、その大阪の会社に毎回、ウン千万円単位の振り込みを続けました。もちろんきちんと8割が返金されましたよ。ただ、僕はその大阪の会社の住所も知らないし、そこの社員に会ったこともありません」
何やらミステリーじみた話だが、これも実話。その大阪の会社は何者だったのか。もう25年も昔のことなので、今では調べようがないそうだ。

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