要人暗殺の実行犯は軍事訓練を受けたヒットマン
16日夜の事件にはビックリさせられた。チャイニーズドラゴンのメンバー約100人が乱闘したというのだ。
事件が起きたのは東京・東池袋の高層ビル「サンシャイン60」の58階にあるレストラン。16日午後6時ごろから団体客1組約100人がこのレストランで飲食を始め、突然殴り合いになった。午後6時半ごろ、店員が「理由は分からないが、客100人くらいがけんかしている」と110番通報。巣鴨署によると、男性1人が頭に軽傷を負い、病院に運ばれた。
この日は8月に服役を終えた元リーダーの「出所祝い」で、グループが貸し切っていた。ここに別の団体とみられる男十数人が会場になだれ込み、殴り合いが始まったとの話もある。
警視庁巣鴨署員が駆け付けると、参加者の大半はすでに逃走。頭から血を流した20代男性と幹事の数人が現場に残っていた。店内には割れた皿やグラス、ビール瓶、料理が散乱し、テーブルはひっくり返り、ドアも壊されていたという。
チャイニーズドラゴンは1980年代後半に東京・江戸川区で中国残留日本人の2世、3世が中心となって結成された不良グループ「怒羅権(ドラゴン)」が源流とされる。その後日本人も加入して勢力が拡大。強盗、脅迫、恐喝などの凶悪犯罪に関わり、薬物密輸や振り込め詐欺などにも関与するようになった。警視庁は13年に準暴力団に認定している。
中国人の犯罪組織が注目されたのは馳星周の小説「不夜城」がヒットした96年ごろからだった。新宿・歌舞伎町を舞台にした中国マフィアの抗争劇で、98年には金城武主演で映画化もされている。
筆者は90年代前半からよく歌舞伎町で飲んでいた。中国人が経営するクラブに行くこともあり、常連になるとそこのママからこんなことを言われた。
「ロレックスの腕時計を安く買いたいなら、私に言ってください。明日の正午までに新品を用意できます。値段は5万円でいいですよ」
よくよく聞いてみると、彼女の仲間に中国人の窃盗団がいて、今夜依頼すると、翌日、百貨店に行って数十万円のロレックスを盗み、正午までに届けてくれるというのだ。窃盗団が受け取る報酬は5万円。通常はそのママが自分の取り分を上乗せして客に10万円とかを請求するが、筆者は店の常連なので"元値"でOKという。
夫婦を装った中国人が百貨店に行って陳列ケースからロレックスなどの高級時計を出してもらい、店員の隙をついてポケットに入れて持ち去る、あるいはニセモノとすり替える手口という。
すごいものだと感心していたら、もっと衝撃的な売り込みを受けた。
「死んでほしい人がいたら、言ってください。殺してあげますから。費用は10万円です」
筆者が呆れて聞いていると彼女は、
「本当に確実に仕留めます。嫌な上司とか先輩がいたらいつでもどうぞ。遠慮なさらず相談してください。オホホホ」
そのママは屈託のない笑みを浮かべてセールスするのだった。
その後、ある編集者に歌舞伎町の中国系飲食店が並ぶ路地の店に連れて行ってもらった。彼は奥のドアを指差しながら声をひそめて言った。
「あのドアの向こう側に入っちゃダメだよ。あそこには殺し屋がいるから」
ずいぶんとヤバい店に来たものだと思った。
日本ではたまに銃による殺人事件が起きる。銀行のお偉いさんが殺されたとか、飲食チェーンの代表が撃たれたといった事件で、その多くは犯人が捕まっていない。
筆者の知人で裏稼業に通じている人はいつも「それらの犯人は中国人と考えていい」としてこう言っている。
「暗殺を企てる者が中国人のヒットマンに依頼する。ヒットマンは徴兵制度がある祖国で軍事訓練を受けているので銃の扱いに精通。射撃の腕前も抜群だ。仕事をするのは大抵は午前中。午前中に暗殺を済ませたら、その足で成田空港に向かい、午後の飛行機で中国に帰って山奥の村に身をひそめる。彼への依頼は数人を経由しているので警察は指示系統を把握できない。警視庁もヒットマンが中国人であることは把握しているけど、どこの誰が誰の指示で動いたかはつかめない。だから迷宮入りになる」
世の中には怖い世界があるものだ。