4000円のタブレットカバーを2円で買ったウソのような本当の話
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罪悪感と商品を抱えて逃げるように店を出た

3000~4000円の買い物をするつもりが、たったの2円で買えた――。こんな経験をしたことがある。

2年前の7月のこと。長らくタブレットをカバーなしの裸のまま持ち歩いていたが、落として壊したら大変だと思い、渋谷のヤマダ電機に買いに行った。

店員さんに質問しながら、あれこれ見ていると自分の機種に合ったカバーが見つかった。パッケージに「回転させて、動画もWebも快適に! フラップカバー 360度回転スタンドタイプ」とある。

「これをください。値段はいくらですか?」と質問すると、店員さんが「お待ちください」と言って手にした端末で調べた。調べながら「あれ?」と言って端末を何度もいじっている。

2分ほどして彼が言った。
「お客さま。この商品は2円です」
2000円と言ったのだろうと思い、聞き返したが、
「いえ。2円です」
「えっ、2円で買えるの?」
「さようです」
「何で?」
「そのようにコンピューターが値段をつけていますので」
「はぁ……」

筆者はビックリ、店員さんはやや困惑。彼は他の店員に相談することもなく、
「2円でけっこうです」
と重ねて言った。コンピューター管理の販売価格である以上、誰かに聞いて変更するなんてことはありえないのだろう。

新品が2円なら安い。だけど2円で買うのは相手の弱みにつけ込むような行為だ。気が引ける。どうしよう……。

結局、筆者は欲望に負け、その商品を2円で買うことにした。

あらためて聞くと、店員さんは、
「古い商品は値下げして店頭に並べたりします。その際にコンピューターが値下げ価格を決めることもあるのです。その過程でこの価格になったのだと思います」
「つまりコンピューターがミスをしたわけね」
「いえ。ミスではありません。コンピューターが値段をつけたということです」
立場上、「ミス」という言葉はタブーなのだろう。

「そうですか。で、この商品、本当はいくら?」
「発売当初は4000円前後で売っていたはずです」

あまり突っ込んだ質問をして「文句を言うなら買うな」と怒られてはかなわないので、それ以上は追及せず、そそくさとレジに向かった。というか「パソコンのミスなので、この値段では売れません」と言を翻されるのが怖くて、一秒でも早くケリをつけたかったのだ。

レジでポケットをまさぐり1円玉2枚を探したが、なかったので10円玉を出した。店員さんは8円のおつりをくれた。

子供のころ戦車のプラモが当たったのを思い出した

記念として写真を撮っておいた。上掲の写真だ。気持ちに余裕がなく慌ててシャッターを切ったため少しボケているが、伝票には「2円」と印字され、おつりのトレーには8円が置かれている。

おつりと伝票を受け取り、商品をカバンに詰め、筆者は「ありがとうございました」と言って逃げるように店を出た。店員さんは2円しか払わない筆者に対して、律儀に「ありがとうございました」と頭を下げた。

筆者の胸には、なんだか悪いことをしたなぁという罪悪感。その一方で、貴重な体験をしたという高揚感に満ちている。罪滅ぼしにこれからはこの店で買い物をしようと決めた。

長らく生きてきたけど、こんなにお得な買い物をしたのは初めて。駅までの道すがら頭が茫然とし、「2円」という文字がフラッシュバックのように何度も浮かんだ。

同時に小学4年生のとき、近所の駄菓子屋の10円くじで1等が当たったのを思い出した。商品は田宮模型の戦車のプラモデル。ソ連のジューコフだった。

筆者は反戦主義者だが、戦車が大好き。子供のころは戦車のプラモばかり作っていた。ジューコフはまだ持っていなかったので、本当にうれしかった。あのときも頭が茫然とし、「1等 ジューコフ」の文字と箱のイラストがフラッシュバックしたのだった。

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