漢字が読めない麻生太郎はマフィアのドンに大変身
冬になると、街の景色が変わる。北国は雪が降って白一色となる。人の洋服は厚手になり、マフラーと手袋が加わる。
ついでに変わるのが麻生太郎の衣装だ。夏場でも目立つ格好をしているが、冬はボルサリーノを斜めにかぶり、長いマフラーは巻くのではなくだらりと垂らす。その上にダーク系のロングコートを着こむ。
まるでマフィアのドンである。山口組組長の司忍は麻生を真似たんじゃないだろうか。
麻生がマフィアに変身したのは2013年のG20のときだ。ファーの襟が付いた黒のロングコートにブルーのマフラー、斜めにかぶった黒のボルサリーノという出で立ち。ウォールストリートジャーナルは「粋なデビュー」としつつも「ギャングスター・スタイル」と評した。日本でも「何だあれは?」と失笑が聞かれたものだ。
以来、麻生はドンのファッションを続けている。夏場も薄手のボルサリーノをかぶっている。もちろん斜めに。
麻生はなぜこの恰好が気に入ったのか。本人に聞いたわけではないが、筆者は彼の中にある気の弱さに起因するものだと勝手に想像している。
総理時代に「未曾有」を「みぞうゆう」と読むなど無知をさらし、国民にさんざんバカにされた麻生。「歴代の総理で一番のおバカ」という陰口は、おそらく菅義偉が出てくるまで維持された修飾語句だろう。
麻生は政権末期に囲み取材で女性記者の質問を受け、「裏を取ってるわけね」と食ってかかった。あれはバカにされ続けたため怒りが最高潮に達し、歯止めがかからず噴出したヒステリーだったと考えていい。
あれだけコケにされたのだ。何か自分の身を守るものが欲しかっただろう。そこで国際会議におもむく際に仮装パーティーよろしくマフィアの親分に扮した。そしたら話題になった。国民は笑ったが、本人は「俺はビッグ!」と田原俊彦チックに満足し、やめられなくなったのだろう。
気のせいか、マフィアとして認知されてから、麻生のべらんめえ口調がさらに野放しなったように思われる。
ヤクザが体に入れ墨を施して金バッジや金の指輪、金のネックレスを身に着けるのは自分を強く見せるためだ。麻生も「俺は強いんだぞ~」と国民や記者たちを威嚇しているのだろう。
洋服や着物は人間をその気にさせる。まことに便利なものだ。
以前、銀座のママさんにこう言われた。
「私たちも芸能人も同じ。高級な衣装を着ていると顔に自信が出る。100万円や200万円もする着物をあつらえるのは自信を持って接客するため。もし安物だったら、堂々としていられない。するとお客さまに見透かされてしまう」
人間は自信を持っている人に惹かれるものだ。さえない男でも1着ウン十万円のオーダーメイドのスーツを着ると顔としぐさに自信が満ちて輝く。その姿を見て女性は「あら、すてき……」とポーッとなる。
ナポレオンだったか、「制服が人をつくる」という言葉があるように、衣装は人を変えるのだ。ダサい男でも衣装ひとつでモテ男になれることは覚えておいたほうがいいかもしれない。
京都全日空ホテルで手首を切った宮沢りえ
芸能界で衣装の力を借りて逆境を跳ね返した人物といえば、最初に思いつくのが10年前に亡くなった中村勘三郎だ。1994年9月24日、宮沢りえ(当時21歳)が京都全日空ホテルで左手首を切って自殺未遂騒動を起こし、当時39歳の勘九郎(勘三郎襲名の前)に不倫疑惑の目が向けられた。
3日後、勘九郎は京都で会見を開いた。ちょうど時代劇の収録中だったため、豊臣秀吉の恰好で会見場に登場。派手な鎧を着こみ、頭に烏帽子、手に軍配を持つ姿は戦国時代の戦場に立つ武将そのもの。いかにも強そうに見えた。
勘九郎は衣装に勇気づけられたのだろう。普段にない力のこもった怒鳴り声で宮沢りえとの関係を否定。
「みなさんは私が原因で宮沢くんが手首を切りましたというセリフを期待しているんだろうが、そんなに面白いか! きょう『牧瀬里穂との三角関係に悩んで切った』と書いてたところがあるけど、じゃ、それしゃべった歌舞伎の大物ってダレなの? 連れてきてよ! 不倫? してないよ」
と怒りの表情で一気にまくしたてた。まるで本物の武将が命がけで闘っているようだった。
筆者はこの時「宮沢りえとの関係は本当だな」と感じた。彼は心に弱みを抱えていたから、衣装を脱がず、武将の姿かたちで「俺は戦国の覇者だ」「おまえたちには負けないぞ」と自分を奮い立たせ、リポーターらの質問を圧殺しようとしたのだろう。まさに熱演。時代劇の収録は実に好都合だった。
この会見ではもうひとつ気になる点があった。勘九郎が宮沢りえを「宮沢君」と呼んでいたことだ。宮沢りえは梨園の後輩ではないのだから、「りえさん」とか「りえちゃん」と呼んでもよかったはずだ。勘九郎は宮沢君という言葉によって、自分と宮沢りえに距離があるのだとアピールした。筆者はそんなゲスの勘ぐりをしたのだった。
筆者はその後、2人に関する情報を耳にした。そして「なるほど」と思った。
まあ、大人のことだからね。好きにしていいんじゃないの。