原因は「一年の計」 女性理容師が元旦の朝3時まで働かされた「理髪店残酷物語」

子供の3割が「現金のお年玉はダメ」と拒絶

新年早々「へぇ~」と思うニュースを聞いた。お年玉の渡し方についてのアンケートだ。

調査会社のインテージが今年のお年玉の渡し方を調査したところ、現金で渡すと答えた人が約90%を占め、スマートフォンのキャッシュレス決済を選ぶ人は1%未満だった。現金にする理由は「ありがたみが伝わる」「実感がわく」との回答が多いという。

これに対して、20歳以下でキャッシュレス決済での受け取りを希望する人は3割にのぼった。「普段キャッシュレス決済を使っていて便利」と答える人が多かったという。

つまり、お年玉をもらう子供世代の3割は「もう現金渡しの時代じゃないよ」と考えているわけだ。筆者のように、お年玉のポチ袋を見ただけでパブロフの犬よろしくヨダレを垂らした世代としては隔世の感を覚えてしまう。

「ありがたみが伝わる」「実感がわく」という理由では給料の支払い方法も同じ。昔は給料日に父親が月給袋を妻に渡し、その日はすき焼きを食べて、父は大黒柱の威厳を示した。ところが給与が振り込みになってからは袋の中に明細書が一枚入っているだけ。ここから夫と妻のパワーバランスが変化したとの指摘があるのはご存知のとおりだ。

それはともかく正月、特に1月1日は「一年の計は元旦にあり」といって、その年に何をするかを決める大切な時期だ。筆者も元旦を迎えると「今年は〇を達成するぞ~ッ」と心に誓う。だが怠け者なので当たり前のように未達となり、翌年の元旦に「去年は諸般の事情でダメだったけど、今年こそ〇をするぞ~ッ」と叫ぶことになる。この悪循環を50年以上繰り返してきた。

今年も昨年と同じ誓いを立てた。おそらく来年の正月も「今年こそは~ッ!」と哀しい雄叫びを上げているだろう。

親戚を集めてタバコ50箱を焼き捨てた

筆者が学生だった四十数年前、バイト先のペンキ屋の親方が「禁煙を始めて2年半になる」と言っていた。
どうやってタバコをやめたのか。

「簡単だよ。元旦に親戚をうちの庭に集めて焚火をしたんだ」
と彼は教えてくれた。
「その際、買い溜めしていたセブンスターを全部火の中に投げ入れた。50箱くらいあったよ。みんなが見つめる中でタバコを燃やし、俺は『今日を境にタバコをやめる』と宣言した。義妹が『お兄さん、もったいないから、うちにください』と言ったけど、それでは決意を固めることにならないから、すべて燃やした。普通の日でなく、元旦にやったから今も根性が続いてるんだ」

30年前のテレビドラマやアニメには、年末に日記を買い、元旦から書き始める場面があったものだ。「サザエさん」ではカツオが鉛筆をなめながら書き始め、「結局、三日坊主に終わった」とのナレーションで物語が締めくくられた。

ただ、最近は正月に日記を書き始めたという話をあまり聞かない。日本人の心の中で、元旦の重要度が薄らいでいるのかもしれない。

昔は違った。筆者の行き着けの理髪店(東京・世田谷区)のオバサンは「以前は12月31日に店の前に行列ができた」と言う。

「当時の人は、元旦にちゃんとした恰好をしていなければ良い年を迎えられないという意識が強かったため、年内に髪を切ってさっぱりしたがる男性客が多かったんです。だから大晦日はバイトを雇ってひたすら髪を切りまくりました。それでも夜中までかかる。というか毎年最後のお客さんを切り終えるのは元旦の朝3時ごろ。だから『紅白歌合戦』をナマで見たことはありませんでした。お客さんもまた、紅白を見るより容姿をきちんとしておきたいという気持ちが強かった」

つまりオバサンは大晦日に午前9時から翌午前3時までぶっ通しで、馬車馬のように働いたわけだ。実働18時間。過労死ラインだろう。
客もまた、午前3時まで辛抱強く散髪を受けた。信心深かったとも言えそうだ。

「だけど30年くらい前からかな。大晦日にどうしても散髪したいという人が段々少なくなった。この10年ほどは午後9時ごろから、ナマで紅白が見られるようになりました」(同)

そういえば、昔は時代劇だけでなく、テレビの現代ドラマにも「ご先祖様に申し訳ない」というセリフが登場した。だが最近はご先祖様のほか天罰や仏罰といった言葉もそれほど聞かなくなった。日本人の信仰心が希薄になったということだろうか。まあ、筆者はこの世には神も仏も現御神も存在しないと思っているから、それでかまわないけどね。

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