試写室で睡魔を撃退するためあれこれと考え続けた
わが目を疑う光景だった。
昨日(22日)の参議院本会議。更迭された寺田稔に代わって総務大臣に就任した松本剛明(63)があろうことか、会議中にウトウト。居眠りをしていたのだ。
松本は「私、目が細いので」と言い訳したが、どう見ても眠っていたとしか思えない。新大臣としてお目見えしたその日に眠るとは、単なる睡眠不足ではなく、脳の病気ではないかとさえ思えるが、それはともかく居眠りの話である。
筆者も長年、居眠りと闘っていた。というのも映画の試写で眠気に襲われることが多かったからだ。
勤務先の会社では週に1度回ってくる朝の当番があり、午前7時から会社に詰めて速報ニュースを書いて入稿する。いわば泊り仕事だ。
入稿作業が終って昼過ぎに業務から解放され、「さあ、映画の試写を見に行こう」と会社を出る。
ところが前夜は会社で原稿を書き、短い仮眠を取っただけなので、映画が回り始めて30分もするとウトウトしてくる。我慢するが、まぶたが重い。睡魔は心地良い。吸い込まれるように眠る。
しばらくして目を覚ます。スクリーンではすでに主人公が犯人に追いかけられる場面にきている。何が何だか分からないうちに映画は終わる。これでは試写室に足を運んだ意味がない。上映後に宣伝会社の人につかまったら最悪。「いかがでしたかぁ?」と聞かれると「とっても良かったですぅ~」と言って脱兎の勢いで逃げるしかない。
そこでこの数年、試写室で居眠りをしない方法を考えてきた。ネット上には以下のような方法が投稿されている。
①冷たい水を顔や首にあてる
②眠気に効くツボを押す
③痛みを感じやすい場所に刺激を与える
④息を止める
⑤水やお茶を飲む
⑥ストレッチをして血行を良くする
⑦ブドウ糖を摂取する
⑧メンソールを首や鼻に塗る
①と⑥は映画上映中は無理だ。②は手の平の中央部や親指と人差し指の間のツボなどを押すのだが、筆者にはあまり効果がない。
④⑤⑦は刹那的には効くが、すぐに眠くなる。⑧はまだ試してない。メンソールの匂いで周囲にスメハラをもたらすのではないかと心配だからだ。
というわけで比較的効果的だったのが③だ。ネットでは二の腕の柔らかい部分を指でつまむ方法を紹介しているが、筆者の場合は少し違う。
近ごろ年のせいか、右手の手首が硬い。そのためVサインはできるものの3本サインができない。そこで手首を折り曲げてほぐすようにした。グイグイ曲げると程よい痛みが走る。これを映画上映中にやったところ、効き目があった。いわば苦痛療法だ。
このほか独自にいろんな方法を考えた。肩越しに後ろに手を回し、背骨の一番上の部分をグイグイ揉む。これをやったら一瞬で眠気が覚めた。だが試写室では後ろの席の人に迷惑になる。そもそも腕が疲れる。
次に目を閉じて目玉を外に押し出すよう圧を加えてみた。これもいい。しかも何度かやっているうちに目のレンズの筋肉が若返ったのか、遠くが見えるようになった。だけど映画は目を開けて見なければならない。だから却下。
足首を前後にクイクイ曲げる方法も少しは効果がある。だが途中で疲れてくる。
大切なのは緊張感と耳穴刺激
このように自分にピッタリの眠気防止法があるだろうとあれこれ考えてみた。その結果、ベストだと分かったのが人差し指の先を耳の穴に入れ、眠くなる前から軽く動かす方法だ。耳が脳に近いためか、睡魔が遠ざかる。目下のところ物理的にはこれが筆者のベスト居眠り防止法だ。
だが精神面も重要だ。ここまでいろいろ書いたが、最も大切なのは「不安感」だと思う。
「今日はこの映画の最終試写だ。見逃したら封切まで見ることはできない。俺は眠らずに最後まで見られるだろうか。心配だ。ああ心配だぁ。大丈夫だろうか……」
試写室に向かう時点でこう考えて気を引き締める。さらに上映中は耳穴刺激などを並行して行う。すると睡魔という悪霊を退散させることができる。
ただし、こうした予防法は「眠いなぁ」と感じる前にやっておかなければ意味がない。ひとたび眠気に襲われたら、どんなに面白い映画よりも睡眠のほうが魅惑的になり、マインドコントロールのようにおやすみモードの底なし沼に引きずり込まれてしまうのだ。そうなったら後戻りはできない。
事前に不安感で緊張感を高め、手足や耳を刺激。こうした同時多発療法が目下のところ、筆者の最善の道だ。ただし、これが他人に通用するかは分からない。悪しからず!