「さくら保育園事件」保育士3人逮捕の衝撃 昔の教師が生徒を殴りまくった実態
さくら保育園(HPより)

小学教師はムチを持ったサディストだった

「えっ、3人も逮捕?」
静岡・裾野市の「さくら保育園」の虐待事件でこんな独り言をつぶやいてしまった。
30代の女性保育士が3人も縄付きになるとはすごい事件。というか、世の中は変わったなぁと改めて実感した。この種の犯罪に対しては、冤罪に注意しながら今後も厳しく取り締まっていただきたい。

日本はこの20年くらいで暴力に敏感に反応するようになったと思う。学校で教師が生徒に手を上げたら処分される。そんなことは昔は考えられなかった。

筆者は九州に生まれ、1960~70年代に小学校から高校までを過ごした。他の地域でもそうかもしれないが、九州は精神主義の気風が強く、教師に限らず目上の物に口答えをすると「横着だ」と殴られることが頻繁にあった。横着には「生意気だ」の意味が込められている。

小学校のころから拳骨はまだいいほうで、狂暴な教師は平気で頬を平手打ちした。

小5のとき、明らかにサディストの男性教師がいた。いつも手にムチを持ち、問題に答えられない生徒を威圧し、ムチで殴った。鼻血を流した生徒もいた。

中学の体育の時間、教師が衆人環視のもとで、一人の生徒を平手打ちした。彼が何も言わずに耐えていると「うん? 謝罪の言葉がないなぁ」とさらに2発、3発と殴った。生徒が「すみません」と言うとやっと打擲が終わった。

その生徒はグラウンドから移動するものと勘違いし、数歩駆け出しただけだった。その彼を体育教師は「注意力が足りない」との口実で見せしめにした。それ以来、筆者は体育教師を嫌悪している。今もそうだ。

つまり小学校のころから教師の暴力が当たり前の環境で育ったわけだ。それらの場面はあまりに野蛮なので思い出したくないし、あまり人に語りたくない。ただ、言えるのとは今の世だったら、当時の教師の半分は逮捕もしくは処分を受けているだろう。

当然ながら生徒たちもガラが悪かった。教室の中では頻繁にケンカが起き、それが「子供の元気の良さ=健康な証拠」と評価された。

ついでに言うと、人口6万人弱の町はヤクザやチンピラが多かった。まだ暴対法ができるはるか前だから、彼らは好き放題に暴れていた。

あるとき新聞に、子供会の世話役の20代男性が暴力団の事務所に呼びつけられ、手の小指を切断されたという記事が掲載されていた。

子供会が海水浴のために貸し切りバスを予約したら、同じ日にヤクザもバスを借りようとした。バッティングしたため、ヤクザが、
「俺たちにバスを使わせろ」
「子供たちが楽しみにしてるので、それはできません」
こんなやり取りのあと、暴力団が男性の指を落としたと書いてあった。堅気にエンコ詰めをするとは恐ろしいかぎりだ。

旧日本軍の野蛮な体質を引き継いでいた

そういうわけだから、学校の教師もやり放題。ビンタよりひどいのが悪さをした小学生の頭を両手で挟んで持ち上げるもの。体の体重を首で持ちこたえていることになる。首の神経が切れたり、骨が外れたりしたらどうするのか。そんな危惧は教師の胸にはなかったと思う。

持ち上げられた子は顔が歪む。すると見ている生徒がクスクス笑う。教師は自分の行為が受けたと解釈して気をよくし、一旦下ろしてまた抱え上げる。恐ろしいほど危険な行為。狂った光景だった。

さくら保育園では他の保育士が逮捕された3人の問題行動を見て見ぬふりをしていたという。筆者の通った小・中・高校も同じ。校長ですら、暴力教師に意見できなかった。そうした風土だった。

のちに映画「戦争と人間」や「真空地帯」、テレビドラマ「どてらい男」などの制裁シーンを見るにつけ、あのころの学校は旧日本軍の陰湿なサディズムが残っていたのだと感じた。生徒の指導には多少の暴力が伴わなければ意味がないという考え方だ。

不良少年は殴ればまともになると思い込み、ついでに口答えする子も殴っておこう、これが教育的指導だと考える。軍隊の延長だった。

困ったことに殴られる側もそうした暴力体質を容認していた。
「悪いことをした者は殴られて当たり前」
生徒の口からこんな声をよく聞いた。不思議なことにダボシャツを着てワルをやっていたやからほど教師の"愛のムチ"を認める傾向があった。

その中には他校の教師の息子もいた。この息子は筆者の同級生2人を武道場の奥に呼びつけ、それぞれの顔をこぶしで4、5発殴った。後輩に対する鉄拳制裁だ。筆者はこのことを告発し、殴った先輩生徒は停学処分を受けた。

あとで知ったことだが、この生徒の親は工業高校の暴力教師だった。遺伝したのである。

前述したように、この20年ほどで日本人は非暴力に向かっている。まことに喜ばしい。
だが我々は上の者が下の者に威張り散らす風習を容認したり、称賛する傾向がある。
カラオケスナックで昔の軍歌を歌っている若者もいる。彼らに話を聞くと、
「戦前のピリピリと緊張した社会が好き」
と答える。

大学生の息子がいる50歳前後の女性に「日本でも徴兵制が敷かれるかもしれませんよ」と言ったら、
「そのほうがいい。今の男子は軟弱だから、若いうちからビシビシ鍛えるべきです」
と豪語していた。

こうした人々がいるかぎり、またも暴力社会に戻るのではないかと心配だ。

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