不動産会社はバブル崩壊後「呪いセット」を1万5000円で売り出して大成功
昨夜のこと。電話で占い師をした経験のある友人のA君と話をした。彼は10年ほど前にネットで「あなたの運命を鑑定します」と宣伝。深夜に電話相談を受けていた。
「相談者の9割が女性でした」とA君は言う。自分の運命を鑑定してもらいたい、彼氏と結婚できるかを知りたいといった依頼を受け、電話で話す。
そうした中、あることに気づいた。女性の多くが別れた男に未練タラタラ。それも自分から男を切り捨てたくせに何年も忘れられず、想い出を胸に抱いているというのだ。
A君の弁。
「交際していたけど、男性が結婚までモタモタしているため、女性が『もういい。あなたと別れる』と宣言するパターンです。男性は『ちょっと待って』と追いかけるが、女性は頭を切り替えて相手を切り捨て、新しい恋愛に向かう。ところが3、4年もすると、その元恋人のことが無性に恋しくなる。そんな女性が多いのです」
彼女たちが占い師のA君に相談する言葉は同じ。「先生、彼は今も私のことを思ってくれてるでしょうか?」というものだ。
筆者は男だから分かるが、別れた恋人にいつまでも未練を抱くのは男のほうで、女性は「この男はダメだ」と思ったら、一気に愛情がクールダウンするもの。ところがA君は「別れた男に未練を抱き、恋しがる女性が多いのでビックリしました」と言うのだ。
筆者も「意外だねぇ」とちょっと驚いた。そうした女性の中には「街を歩いてるときに懐かしい曲を聞くと、彼と過ごした日々を思い出して涙が流れてしまう」という人もいるらしい。
女性の相談者の中には「彼を呪い殺してください」と要請する向きもいるそうだ。恋愛していたがフラれたとか、妻子持ちの男性に「妻とは別れる」と言われて関係を続け、最終的に彼が妻のもとに戻っていったようなパターン。「私を棄てたあの男が憎い」と恨み骨髄になり、「占い師なら、呪い殺せるでしょ。殺してくださいよ」と懇願するという。
このほか職場の先輩女性にいじめられているので呪い殺して欲しいというOLも。看護師から先輩看護師を殺してくれという依頼も数件受けたそうだ。白衣の天使もいろいろ悩みがありそうですなぁ。ちなみに相談料は後払い。料金を払ってくれたのは1割弱だった。
過去には呪い殺しの依頼が殺到した企業がある。1990年代初頭にバブル経済が崩壊し、ある不動産会社が金融機関やサラ金などから借金の返済を迫られた。連日に渡ってしつこい取り立てを受け、その会社の経営者は「あいつらを呪い殺してやりたい」と考えた。それがヒントになった。
彼は「俺みたいに誰かを呪い殺したいと思っている人がごまんといるはずだ。そうした人をターゲットに商売をしてはどうか」とひらめいた。その結果売り出したのが「呪いセット」。藁人形と五寸釘、木槌の3点セットを1万5000円で販売したとろ大ヒット商品となった。不動産屋が畑違いの商売をやって成功したわけだ。
ところが大ヒットは厄介な依頼を生んだ。呪いセットを購入した女性から「呪いセットを売ってるんだから人も殺せるでしょ。あの人を呪い殺して欲しい」との依頼が殺到したのだ。
あるときこの会社に週刊誌の記者が取材に行くと、インタビューの間、経営者の携帯がずっと鳴っていた。経営者は電話に出ず呼び出し音を無視していたが、あまりにも頻繁に鳴るため、「ちょっと失礼」と言ってその場を離れ、廊下に出た。記者が耳をそばだてて聞くと、彼は、
「ええ。今やってます。だから四六時中やってますから、安心してください。効果はじきに出るはずです」
と電話の向こうの人物に話し続けた。
あとで事情を聞くと、少し前に呪い殺しを頼んできた女性から「彼はまだ生きている。呪い殺しはどうなってるんですか?」と催促の問い合わせを受けたとのことだった。
ちなみにその会社は呪いセットは販売したが、呪い殺しは引き受けなかった。経営者はしつこい依頼人に「今やってます」と答えて相手を納得させていたという。まるでそば屋の出前ですなぁ。