ドブでオシッコをしたら本当にチンコが腫れた
たまに同年代の男と昔話をする。話題にのぼるのが子供のころに聞かされた言い伝えや迷信だ。
筆者は子供のころ、よく「ドブでオシッコするとチンコが腫れる」と親から言われた。そんなことないだろと思っていたら、6歳のときに本当に腫れた。
その日は友だちと露地のドブでカニを捕まえて遊び、途中で放尿した。その晩、チンコを見たら腫れていた。風呂に入り、母に天花粉をつけてもらって一晩眠ったら、チンコは原状回復していた。
なぜ腫れたのか。
大人は「罰が当たった」と言っていたが、実は違う。ドブで遊ぶと手に雑菌がつく。その手でチンコに触れると尿道から雑菌が入り腫れるのだと、中学時代に何かで読んだ。この世のあらゆるものは科学的な因果関係があるのだと知った。
ちなみに天花粉はその後「シッカロール」と名前を変え、現在は「ベビーパウダー」と呼ぶらしい。天花粉よりベビーパウダーのほうがかっこいいから、よく売れるのだろう。ズックをスニーカーに言い換えたときの経済効果に似ている。これも科学的な因果関係と言えようか。
「北枕は縁起が悪い」という言葉がある。これはその昔、死者が出ると頭を北側にして遺体を寝かせたからだ。保冷剤などのない時代、頭部の腐敗を避けるために北側に向け、板壁から漏れてくる北風で冷やしたためだと何かの本に書いていた。自然を生かした保冷効果だ。何度も言うが、科学的な因果関係はあるものだ。
「山に登る前に神様に祈ると遭難しない」と言われる。筆者の友人などは「本当に神様がいて守ってくださるのだ」と固く信じているが、神様は忙しいからわざわざ山登りにつき合ってくれるはずがない。
神の存在を信じない筆者はここにも科学が存在すると思う。原理は単純だ。
事前に神に祈る人はもともと慎重な性格なのだ。山には自然の災いが待ち受けていると覚悟し、警戒している。
だから気を引き締めるために神に祈る。その結果、少しでも雲行きが怪しい思うと無理をせず、山小屋に避難しようなどと慎重策を取る。
一方、神に祈らない軽率な人は怪しい雲を見ても「大丈夫大丈夫。すぐに晴れるよ。レッツゴー!」と川口探検隊の乗りで歩き続け、嵐に遭遇して死んでしまう。
例の友人にこの話をしたら、膝をポンと叩いて「なるほどねぇ」と感心していた。ただ、彼が神様を信じなくなったかどうかは知らない。
宮本武蔵だったか、「神仏を尊びて、神仏を頼らず」という言葉がある。筆者はいつも、
「神仏を信じずとも、神仏を軽んずべからず」
と呼びかける。そして調子に乗り、
「神が人間をつくったのではない。人間が神をつくったのだ」
と言ってキリスト教の人たちを怒らせてしまう。
「禍は口より出ず」
ここにも科学的な因果関係がある。
そんなときは「自己批判してま~す」と昔の学生運動風にごまかそうとして、ますますぬかるみにはまってしまうのだ。