ヤクザとみかじめ料と美人局
最近は暴対法や暴排条例などでヤクザの影が薄くなり、安心して夜の街を歩けるようになってきた。まことに喜ばしい。
とはいえ数日前、愛知県にある山口組の参加団体が露店商などからみかじめ料を取っていたことが発覚して摘発された。30年以上前からみかじめ料を集め、多い月は1000万円を越えていたというから、すごい話だ。それだけで年商1億2000万円。ちょっと睨みを利かせるだけでぼろ儲け。五輪疑獄の高橋治之元理事も顔負けの「濡れ手で粟」である。
筆者の知人に、週刊誌で暴力団の記事を書きまくっているK記者がいる。彼によると、飲食店などは警察に「ヤクザとは縁を切りました」と言いながら、実はみかじめ料をこっそり払ってる店がまだけっこうあるという。絶縁するとどんな報復を受けるか分からないので、怖くて逃げられない、あるいはもともとヤクザが好きな堅気が経営しているというのだ。
みかじめ料の徴集には縄張りがあり、飲食店が入っている雑居ビルの場合「何階から上は◯組の縄張り。その下は△組の縄張り」などと区分されている。
ただ、暴対法などでヤクザ組織の下部団体は運営が厳しい。K記者はこう言う。
「3次団体や4次団体はしのぎが苦しくて汲々としている。ヤクザというとベンツに乗ってるイメージがあるけど、貧乏ヤクザの親分は自分のクルマも持てず、子分の自家用車で出かける。クルマは小型のファミリーカーが多く、車内のあちこちに子供が貼ったアンパンマンのシールが。そんなクルマで親分が後部座席から『出せ』と命じる。運転する子分はおかしくて吹き出しそうになるらしい」
そういえば数年前、地方都市で地元の親分が子分と一緒にスーパーで万引きして捕まった事件があった。彼らは米や野菜など食べ物をごっそり盗んでクルマに積もうとしていた。警察の取り調べに親分は「しのぎが苦しいので食べ物が欲しかった」という供述をしていた。
「地方の組の中堅幹部は若い者を従えて飲みに行くカネにも窮している。そのため女房をソープで働かせている幹部も実在する」(K記者)
そこまでやらせるのなら、いっそのことヤクザ業界から引退すればいいと思うのだが、彼らの多くは男をあげるためにこの世界に入った。カッコいい生き方から抜け出せないそうだ。
そんなご時世だから、ヤクザの妻がスナックやバーを経営するケースも多い。そうした店で大企業の重役が常連になり、美人ママに手を出すと美人局という報復を受ける。「美人ママ=美人局」なのだ。世の中は分かりやすい。いずれにせよヤクザはクモの巣を張ってカモを待ち伏せしているわけだ。ご用心!