TBSの女性社員が覚醒剤で逮捕 テレビ関係者が麻薬に群がる無軌道な実態

「一番のお得意さんはテレビのスタッフ。すごい執念です」

TBSの越智忍(47)という女性社員が覚醒剤取締法違反で逮捕された。覚醒剤を使用した容疑だ。越智容疑者はドラマ「華麗なる一族」や「Mr.BRAIN(ミスターブレイン)』などのCG・VFXを担当していたという。

テレビ業界と麻薬は密接な関係がある。自分が紙媒体に勤める身だから言うわけではないが、新聞や雑誌の記者・編集者とテレビの制作スタッフを比べると、テレビのほうが麻薬で逮捕されるケースが多いように思える。

なぜなのか。勝手に解釈すると、記事を書くという作業はけっこう面倒なのだ。文章を書くのは神経と覚悟を要する仕事といえる。

一方、テレビは台本を書く作業もあるが、撮影するのが仕事。おまけに芸能界のような華やかな世界とつき合うことが多い。そのため誘惑にさらされるのではないだろうか。

こんな風に書いたのには理由がある。30年ほど前、六本木で酒を飲んでいるときにS君という覚醒剤の売人と知り合った。彼は当時まだ珍しかった携帯電話を持って薬物を売り、
「テレビ界の人間が一番のお得意さんだ」
と口癖のように言っていた。

実際、テレビ局の正社員や制作会社スタッフ、フリーのADなどが彼の顧客で、こう話してくれた。
「テレビ関係者に共通するのは、自分が業界人になったつもりで覚醒剤に手を出すことです。覚醒剤使用は彼らにとって一種のステータス。どこで調べたのか分かりませんが、僕の携帯には見も知らないテレビ関係者から『売ってください』と連絡が入る。彼らテレビ関係者の覚醒剤に対する執念はすごい。売人の連絡先をとことん探し回るので怖いくらいです」
覚醒剤を使用することで「俺は一般ピープルと違うクリエイティブな世界で活動しているのだ」と実感したがるわけだ。

S君によると、覚醒剤はタレントの中にも幅広く蔓延しているそうで、
「お笑い出身の売れっ子のNはかなり怪しいですよ。テレビで見ているだけで両目の瞳孔が開いてるのが分かりますもん。あれはやってますね」
と笑っていた。

S君は覚醒剤を売るだけでなく使用もしていた。服用すると自分の目の瞳孔が開くのを何度も見ているから、他人の変化が分かるのだという。まだブラウン管テレビの時代なのに、画面で微細な特徴を判別したわけだ。さすがは売人である。

そういえば後年、筆者が知り合った水商売関係者は「覚醒剤にはまると眉毛が気になるようだ」と教えてくれた。その前年に逮捕された元プロ野球選手・清原和博を見てあることに気づいたという。
「清原の顔を見て、おやっと思ったんです。僕が以前勤めていた店の黒服が覚醒剤で逮捕されましてね。彼はしょっちゅう鏡で自分の顔を見て眉毛をいじってたんです。ええ、いつも毛抜きで抜いて細くしていました。清原の眉も同じ形。あれは覚醒剤中毒の特徴じゃないでしょうか」

錠剤を飲み込んだOさんは三日三晩眠れなかった

S君の話に戻そう。あるときS君が「これまでのチンピラ人生を本に書きたい。出版関係者を紹介してもらえませんか?」と筆者に相談してきた。そこでフリー編集者のOさんを紹介した。

OさんはS君と喫茶店で待ち合わせして話を聞いた。そのときから彼は72時間、一睡もできなくなった。翌週、Oさんと会ったらこんな風に説明された。

Oさんと会った際、S君は「友情のあかしとしてこれをあげます」と小さなカプセル状の錠剤をくれた。Oさんは何かなと思って口の中に入れ、歯でカチンとかみ砕いて飲み込んだ。するとS君が「あれ、飲み込んだんですか?」と目を丸くし、「大丈夫ですか?」と何度も聞いてきた。

Oさんが言う。
「何も知らずに飲み込んだところ、それからまったく眠れなくなった。布団に入っても酒を飲んでも眠れない。それこそ三日三晩、一睡もできないんだよ」

筆者もS君と食事をしているとき、その場に彼の友達が現れ、S君がジャンパーのポケットからナイロン袋を取り出すのを見たことがある。袋の中には仁丹を一回り多くしたくらいの小粒の錠剤がぎっしりと入っていた。楕円形で半分が半透明の茶色、半分が黒色。300錠くらいあった。S君はその一部を友達に渡していた。

Oさんが飲み込んだのは同じもので、おそらく覚醒剤のような成分なのだろう。

Oさんは3日間眠らなかった。人生の時間を有効活用できたじゃないですかと言ったら、彼は怒ったような顔でこう反論した。
「冗談じゃない。俺はその後3日間眠り続けた。途中で目を覚ましてトイレに行くことはあったけど、体がぐったりして動けない。あれは悪魔の薬だよ」

S君も言っていたが、覚醒剤をやると五感が研ぎ澄まされる。人によっては目がよく見え、それこそ、
「夜中にクルマを運転してるとき1キロ先の人影も識別できる」
のだそうだ。

そういえば1970年代のトラック業界では「運転手に麻薬常習者が多い」との噂が広まっていた。気持ちいい上に居眠り運転の防止になるという。1982年の映画「さらば愛しき大地」(根津甚八、秋吉久美子)は覚醒剤を使用したダンプの運転手が愛人を殺害した事件をヒントに柳町光男監督が脚本を書いた作品だ。主人公が夜中の運転席で注射を打つ場面が不気味だった。

覚醒剤についてはまだまだ興味深い話があるが、あまり長く書くと顰蹙を買いそうなので、今回はここまでにしたい。

ちなみに売人のS君はきれいに足を洗い、今では映画関係者として活動している。人生いろいろである。

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