日本人は安倍晋三を盲信しつつ前澤友作にカネの無心をする
ツイッターをやっていると正体不明の人物にフォローされることが多い。美女の写真を使い、「ビジネスでお金をたくさん稼いだ。資産が50億円あるから、これからはお金を配りたい。1人あたりに10万円プレゼントします」というような内容。というか誘い文句だ。
コンタクトを取ったらどうなるのかなと思いつつ、君子危うきに近寄らずの戒めを守って何もしないでいた。だけど興味津々だ。実態を知りたくてしょうがない。
そんな折、日刊ゲンダイの多田文明の連載を読んで謎が解けた。9月15日号「悪徳商法の仮面を剥ぐ」シリーズの第3回「口座開設で詐欺の共犯に 警察に呼ばれ弁護士から返金要求受ける」という記事だ。
それによると、20代のOLがツイッター経由で「お金を配ります」というアカウントを訪れたのが事の始まり。「資金調達できます」との文言を信じてメッセージアプリでやり取りすると、男から、
「お金を振り込む条件として新規に銀行口座を開設してもらいたい。そのキャッシュカードを送ってくれたら、1週間後にお金を口座に入れてカードを返す」
と言われた。
OLは言われたとおりにしてキャッシュカードを送ったものの、待てど暮らせどキャッシュカードが戻ることも口座に入金されることもなかったという。要するに彼女のキャッシュカードは詐欺グループの道具に悪用されたのだ。
そのことが分かったのはある都市銀行から「犯罪収益移転防止法に基づく取引確認の依頼文書」が届いたからだった。OLはここで初めて自分が詐欺行為に加担したことに気づいて警察に出頭。自分の口座に一旦100万円が振り込まれ、すぐに引き出されていたことを知らされた。詐欺師がカモにカネを振り込ませ、即座に引き出したのだろう。
さらにOLがぎょっとする事態が起きた。彼女の口座を使った詐欺による被害者が弁護士を通じて「振り込んだお金をすべて返金せよ」と請求してきたのだ。犯人がどこの誰かは分からない。だがOLの名前と住所は分かっている。「だからあんたがカネを返せ」というわけだ。
OLとしては、カネを期待しながら一銭ももらえず、おまけに警察に出頭した上に「金返せ」と迫られたのだから、まさに踏んだり蹴ったり。
このOLが最初の人物を信じたワケというのが興味深い。「すでにお金配りをしている人がいるから、この人もそうだと思った」というのだ。
今の日本で堂々と「お金あげますよ~!」とアピールしている人物と言えば前澤友作だ。なにしろ宇宙にまで出かけてカネ配りをやった。現代の紀伊国屋文左衛門だ。くだんのOLはこの世に前澤がいるから、他にも金配り人間が存在すると思ったのだろう。
この記事を読んで、筆者は複雑な思いが込み上げた。ツイッターの男を疑わずカネをもらえると信じてしまう人間の無防備ぶり。そして前澤友作に飛びつく精神のさもしさだ。
バブルの前、つまりバブル不況が始まる前の日本人はこれほどあからさまに「オラにも100万円くれ~!」と金持ちにすがりついたりしなかった。80年代の狂乱の好景気とその後の不況風で、人間精神が荒廃したのかもしれない。
いずれにしろ民衆が前澤にカネの無心をする姿は見苦しい。もちろん、カネ配りを喜びとする前澤はもっと見苦しい。
日本はいま不景気にある。原因はアベノミクスが失敗したからだ。だが国民はアベノミクスの破綻に気づかない。いくら説明しても信じようとせず、それどころか「安倍晋三センセイは立派な人だった」と盲信の雄叫びを上げる。真実を見ようとしない。為政者が唱える「由らしむべし知らしむべからず」とはこういうことだ。
物事の真実を見ようとしないから、安倍晋三の悪政を野放しにした。真実を見ようとしないから、前澤友作2号、前澤友作3号が自分に近づいてきて「はい、お金をあげるよ~。お口をひらいて~」と大金をポンと恵んでくれると信じ込んでしまった。現代ニッポンの思考力低下の現実がここにある。
ということはこれからもこのOLのような利用されるカモが絶えることはない。なぜなら不景気で人は「お金が欲しいよ~!」と悶え、冷静な視点を喪失しているからだ。忘れてならないのは、この塗炭の苦しみをもたらしたのがほかならぬ安倍晋三ということである。
分かるかなぁ~、分かんね~だろうなぁ~。