クヒオ大佐は「父はカメハメハ大王の末裔、母はエリザベス女王の妹」とウソを
先週、TBSの「ひるおび」で「国際ロマンス詐欺」を特集していた。外国人を装った男がネットを通じて日本の女性とコンタクトを取り、自分の境遇に同情させたり、あるいはリッチな暮らしを信じ混ませたりしてカネを引っ張る詐欺師だ。
スタジオではこの詐欺に詳しいカウンセラーの新川てるえさんが犯人の手口を解説。これまで独身を謳歌してまいたが、コロナ禍で孤独をかみしめた女性がマッチングアプリなどに登録して詐欺師と接触するケースが増えているという。
たとえば50代の女性は趣味で撮った写真をインスタグラムにアップしたところ、シンガポール在住の自称経営者の男からメッセージが届いてLINEでやり取りを開始。甘い言葉で優しさを演出された。
半年後、男から暗号資産の話を持ちかけられ、最終的に全財産の500万円を振り込んだ。その後、カスタマーサポートを名乗る人物から「400万円以上の手数料を払わないと出金できない」と言われて初めて詐欺に遭ったことに気づいたという。
こうした投資話を伴わない元祖国際ロマンス詐欺では半年から1年かけてじっくりと騙していくケースもあるそうだ。
そういえば筆者は昨年、香港の青年から国際ロマンス詐欺を仕掛けられた女性とネットで会話したことがある。その青年はマッチングアプリで「民主化運動でひどい目にあっている。米国に亡命したいけどお金がない。援助してください」と懇願してきた。彼女は少しだけ金銭援助したところで詐欺だと気づき、早々と手を切ったそうで、「相手の男は香港人を装った日本人のようでした」と話してくれた。
国際ロマンス詐欺の先駆けは1999年に逮捕されて注目されたクヒオ大佐だろう。クヒオは「私は米空軍のパイロットで父はカメハメハ大王の末裔、母はエリザベス女王の双子の妹。東大大学院で博士号を取得した。結婚したら英国王室から3億円が支給される」と言って独身女性に接近。女性に電話してジェット機の爆音を聞かせ「いまどこそこの上空を飛行中」とウソをつくなどして虎の子の貯金を騙し取っていた。要するに結婚詐欺師である。この犯人、実際は北海道出身の日本人で、学歴は職業訓練学校卒だった。
クヒオについては堺雅人主演の映画「クヒオ大佐」に詳しく描かれている。同映画の原作本によると、犯人のクヒオは網走市の出身で、カモの女性と待ち合わせしている店で白米と野沢菜を食べてしんみりと満足していたとか。映画のクヒオは堺雅人がメークで鼻を高くしていたが、捕まった犯人は見え見えの整形鼻だった。
こんな男になぜダマされるのかと少し呆れるが、そこには理由がある。以前、男女問題に詳しい女性評論家と話したら、「30代、40代の独身女性がダマされやすい」とのことだった。これまでずっと独身を通してきたが、久しぶりに同窓会に出ると、同級生の女性たちから子供が大きくなったとか夫が出世したといった話が出る。聞いているうちに疎外感と寂寥感を感じるのだとこう解説してくれた。
「そうした女性は自分をいわゆる“負け犬”と認識したとき、ホームランを打って見返してやりたいと考えるのです。ただ、そのためには普通のサラリーマンとの結婚はダメ。後妻の口なんてのは惨めなのでさらにNG。彼女たちが求めるのは白人のイケメンなのです。白い肌の婚約者をつくり、次の同窓会では2次会の会場に迎えに来させたいと考える。同級生たちがビックリし、羨ましがる姿を想像して悦に入るわけです。こうした願望を抱いているところに白人の若者から誘い文句がきたら、よほど自制心の強い女性でないかぎり飛びついてしまいますよ」
彼女たちは白人でなく、かわいい顔をした日本人の年下男子でもOK。とにかく「同級生を見返してやりたい」という復讐心のようなコンプレックスを抱いているという。こうやって老後のために用意していた貯金をはたいてしまうのだ。